ワンちゃんのヘルニアについて
ヘルニアは臓器や組織が穴を通って出てくる状態です。椎間板ヘルニア、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、会陰ヘルニアが目に見えてわかる病気です。先天性の横隔膜ヘルニアも診察することもあります。
ワンちゃんの椎間板ヘルニア
ワンちゃんでは、ミニチュア・ダックスフンドとトイ・プードルでよくみられます。椎間板とは、ワンちゃんの背骨と背骨の間にあるクッションのような組織で、これが何らかの原因で圧迫されて飛び出してしまい、脊髄を障害して様々な神経症状を引き起こすものを、椎間板ヘルニアといいます。主な症状として、首で起こった場合には首の痛み、歩行時のふらつきなど、腰で起こった場合には、後ろ足の麻痺などが挙げられます。椎間板ヘルニアがひどく脊髄神経を圧迫すると脊髄軟化症と呼ばれる病気になります。神経が徐々に壊れていき最終的には呼吸困難で亡くなる場合もあります。1週間程度観察をして、症状が進行していなければ手術を検討します。
椎間板ヘルニアの種類
椎間板ヘルニアは、大きく次の2種類に分けられます。
ハンセン1型椎間板ヘルニア
椎間板を構成する組織のうち、クッションのような役割を担う「髄核(ずいかく)」というゼリー状の組織が完全に外へ飛び出した状態です。ミニチュア・ダックスフンド、フレンチブルドッグなどのワンちゃんに多くみられます。
ハンセン2型椎間板ヘルニア
加齢などにより椎間板が変形し、椎間板を構成する組織のうち、クッションの外側部分に該当する繊維輪(せんいりん)内に髄核は留まっているが、椎間板が後方に膨らんだ状態です。ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーなどのワンちゃんに多くみられます。
椎間板ヘルニアの症状
- まっすぐ歩けないなど、歩行がおかしい
- 急に運動したがらなくなる
- 抱っこを嫌がる
- (腰椎付近でヘルニアが起こった場合)後ろ足が麻痺して、足を引きずったり、立ち上がりにくくなったりする
- (頸椎付近でヘルニアが起こった場合)首が痛んだり、麻痺したりする
など
椎間板ヘルニアの原因
椎間板ヘルニアの主な原因として、交通事故などによる外傷、肥満、老化などが挙げられます。そのほか、ミニチュア・ダックスフンド、ペキニーズ、などの犬種は繊維輪がもろいため、椎間板ヘルニアが起こりやすいとされています。
椎間板ヘルニアのグレード
グレード1
動作時や、体を触られると痛みが発生します。
グレード2
歩行はできるものの、後ろ足が弱くなっているために、ふらついたり、足を引きずったりします。
グレード3
上手く後ろ足が動かせなくなり、後ろ足を引きずるように歩くようになる場合があります。
グレード4
歩行異常だけでなく、排尿も困難になり、尿が垂れ流し状態になります。
グレード5
後ろ足を強くつまんでも、痛みを感じなくなります。
治療方法
薬物療法
椎間板ヘルニアのグレードに関係なく、ステロイド薬などを処方して、症状の改善をはかります。また、症状を悪化させないために、安静にさせます。
手術
椎間板ヘルニアのグレードが高い場合には、手術が必要になるケースがあります。外科手術により髄核を除去することで、症状の改善をはかります。
ヘルニア治療の費用の目安
- 腰椎ヘルニア:15万円~
- 頸椎ヘルニア:要相談
※入院の期間によって、費用は変動します
※上記の料金には、診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)、などが含まれています
鼠径ヘルニア、臍ヘルニア
鼠径ヘルニアと臍ヘルニアは先天性のヘルニアが多く、小型犬によく見られます。臍ヘルニアは出ベソと言われることもあります。鼠径ヘルニアは生まれた時からヘルニアが出てきている場合と、高齢になって、咳や興奮でお腹に力がはいると、鼠径部に小さな穴が開いると内臓が穴に入り込んで出てくる場合があります。
治療
避妊手術や去勢手術の時に一緒に穴をふさぐか、穴をふさぐだけの手術を選択していただきます。場合によってはヘルニアの出っ張りが大きくならなければ、そのまま何もしないこともあります。
費用
避妊手術や去勢手術をされる場合は、数千円から1万円間での追加の費用を頂いています。ヘルニアだけの治療をされるのであれば1万円からになります。費用の違いはヘルニアの穴の大きさにより、人工物を使う場合は費用が高くなります。
会陰ヘルニア
会陰ヘルニアは肛門の横から内臓が出てくる病気です。ヘルニアの袋に腸が入ると便が出にくくなり、膀胱がはいるとおしっこが出なくなります。オスや尾を切るワンちゃんによく見られます。片方がでてくるともう片方もなることがほとんどです。
治療
ヘルニアの穴を塞ぐために、筋肉が残っているのであれば寄せて穴を塞ぎます。なければ人工のメッシュを使い、穴を塞ぎます。
費用
- 70,000円~
※入院の期間によって、費用は変動します。
※上記の料金には、診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)、などが含まれています。
ネコちゃんのヘルニアについて
ネコちゃんはワンちゃんで見られるヘルニアにほとんどなりません。ネコちゃんで起こる場合は先天性又は後天性の横隔膜ヘルニアです。
ネコちゃんの横隔膜ヘルニア
生まれ持って横隔膜に穴が開いているネコちゃんや、交通事故で横隔膜が破れて、腹部の臓器が胸部へ入り込む「横隔膜ヘルニア」は稀にみられます。
横隔膜ヘルニアの症状
- 食欲不振
- 呼吸困難
- 体重減少
など
横隔膜ヘルニアの原因
横隔膜ヘルニアは、大きく次の3種類に分けられ、それぞれで原因は異なります。
外傷性横隔膜ヘルニア
交通事故や、他のネコちゃんとの喧嘩などが原因で外傷を負い、横隔膜が破れて起こるヘルニアです。
腹膜心膜横隔膜ヘルニア
先天的に心膜と横隔膜が繋がっていて穴かが開いていて、そこから腹部の臓器が飛び出して起こるヘルニアです。
食道裂孔ヘルニア
食道裂孔に異常があり、そこから食道や胃の一部が胸部へ入り込んで起こるヘルニアです。主に先天的な要因で起こります。
横隔膜ヘルニアの治療方法
外科手術
呼吸困難など、重篤な症状が現れている場合には、外科手術にて横隔膜の修復をはかります。
ヘルニア治療の費用の目安
- 7万円~
※入院の期間によって、費用は変動します。
※上記の料金には、診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)、などが含まれています。